市場予想倉庫需要が高まり賃貸型物流不動産は
有力な投資対象に物流施設の市場規模、投資対象としてのニーズや
可能性についてご紹介します。

物流施設の建設や
再開発が次々と進行

今、物流施設が注目を集めています。

近年の電子商取引(EC)市場の拡大や、サード・パーティ・ロジステックス(3PL)事業の進展によって、今や「物流施設」は、単に物を保管するかつての「倉庫」のイメージとは異なり、梱包や流通加工、高機能設備などを有する「ハイテク物流センター」へと変わりつつあります。大都市圏では、こうした大規模かつ高機能化した物流施設の建設や再開発が次々と進んでおり、これらの施設はいわゆる「物流不動産」として有力な投資対象ともなっています。

このように期待を集める物流施設の市場規模、拡大が見込まれる物流施設についてご紹介します。

大規模な「賃貸型物流不動産」が
大きく普及

かつての物流施設は、メーカーや商社、倉庫業者が自社で所有する「保管型」が中心でしたが、1990年代後半から高機能設備や流通加工スペースを確保した大型の「配送型」施設が増えはじめ、その後、施設規模が極めて大規模で3PL事業者(物流専門業者)が運用する「賃貸型」施設が大きく普及することになりました。
こうした物流施設の変遷の背景について、国土交通省は次のように分析しています。

  • 1.日本の製造業、小売業は、グローバルな価格競争、経営効率の改善などの経営課題に直面し、生産拠点の海外移転や流通経路の見直しを進めてきた。商流・物流においても最適なサプライチェーンを構築し、効率化を図るため、在庫管理の徹底、物流施設の統廃合が促進された。
  • 2.インターネットの普及によるEC市場の発展や、貨物の小ロット化やジャストインタイム配送など、顧客ニーズが高度化・多様化し、多頻度小口化輸送が求められるようになり、大規模かつ高機能な物流施設のニーズが高まった。
  • 3.各企業はコアビジネスへの選択と集中を進めるなかで、自前で物流施設を持たずに3PL事業者に委託する流れが定着し、3PL事業者は複数の荷主を集約するメリットを得るため、さらに物流施設の集約、大型化を進めた。

これら企業の経営環境の変化、顧客ニーズの高度化・多様化、3PL事業の促進・定着によって大規模かつ高機能な「賃貸型物流不動産」の需要が急速に拡大したわけですが、この動きを下支えしたのは、不動産投資市場の高まりです。

不動産投資の環境整備を受け、2000年初頭から外資系を含む不動産ディベロッパーなどさまざまなプレーヤーが「賃貸型物流不動産」に本格参入しはじめました。物流系ファンドやリートも次々と設立されたことで投資対象として広く認知され、その投資額もオフィス系に次ぐまでに成長しています。

EC市場の急速な発展により、
EC市場規模は大きく拡大

さらに物流施設の拡大に影響を及ぼしているのが、EC市場の急速な発展です。
経済産業省のEC市場調査によると、物販系分野の「B to C(企業・消費者間)」のEC市場規模は高い伸び率で成長してきましたが、2020年以降は新型コロナウイルス感染症による「巣ごもり消費」の影響で、さらに大きく拡大しました。
EC化率(全ての商取引に対するECによる取引割合)も大きく跳ね上がりました。

物流施設はかつての倉庫のイメージから、梱包や流通加工、高機能設備などを有するハイテク物流センターへと変わりつつあり、需要が高く、物流不動産として有力な投資対象となっています。

大規模な「賃貸型物流不動産」の
需要が急速に拡大

「賃貸型物流不動産」の形態は大きく2つに分類されます。

1つは、「BTS(Build to Suit)型物流施設」で、特定のテナントの要望に沿った立地・構造・設備(例えば複数温度帯の冷蔵・冷凍倉庫、医薬品保管、重量物対応など)を兼ね備えた物流施設を建設し賃貸する形態です。大手企業が自前で保有していた物流施設を処分しアウトソーシングするケースや、顧客企業の要望に応じて新たに立地選定し、オーダーメイドで建設、管理運用するケースがあります。

もう1つが、「マルチテナント型物流不動産」で、1棟の物流施設を複数のテナントに賃貸する形態です。多種多様な顧客ニーズに対応するため、庫内フロアはレイアウトの自由度を確保した大空間となっており、各階に大型車やコンテナトレーラーがアクセスできるランプウェイやトラックバースが設けられています。

これら「賃貸型物流不動産」は、テナントの定着率が高く賃料収入も安定的であることから投資対象として注目されています。

コロナ収束後も「食品・飲料等」の
需要は継続・拡大と予想

また、近年注目を集めている物流施設が「冷蔵・冷凍倉庫」です。
物販系分野の「B to C」 EC市場で、市場規模が大きいのは「生活家電・AV機器等」、「衣類・服飾雑貨等」「食品・飲料等」などですが、とくにこれから市場規模の拡大が見込まれるのは、「食品・飲料等」と予想されています。

コロナ禍で広まった「B to C」 EC市場のなかで需要が高まった「食品・飲料等」は今後も継続・拡大が予想され、時短ニーズに対応した半調理品、ミールキットなどの中食向け商品が伸びて「冷蔵・冷凍倉庫」を持った物流施設のニーズは高まるでしょう。

日本でもアマゾンフレッシュが2017年から生鮮食品の宅配を始め、楽天は西友と提携し本格的なネットスーパーに参入したほか、食品宅配サービス大手のオイシックス・ラ・大地も生鮮品だけでなくミールキットや無添加加工食品の販売など業容拡大しています。

こうしたなか、コロナ禍が訪れた2020年に「食品・飲料等」のEC市場は、ステイホームや在宅勤務による生活家電やパソコン、書籍、映像・音楽ソフトなどと並んで需要が増えました。この背景には、当初の外出を控えるための「やむを得ないネットスーパーの利用」から、次第に家庭内で調理を楽しむ「コト消費」を志向する食品のネット購入が進んだ、との指摘もあり、一過性の動きではなくコロナ収束後も需要は継続・拡大していくものと予想されます。さらに「食品・飲料等」のEC化率は、まだ低い水準であり、今後の成長余地は非常に大きいと期待されます。

築40~50年の老朽倉庫が多く、
「賃貸型物流不動産」の
再開発が進むと予想

一方、現在建設されている倉庫には築40~50年の古い倉庫が多く(東京近郊でみても現時点で築40年超が3割弱、10年後には5割を超える)、災害への安全性(耐震性等)、最新設備の欠如、環境性能などで問題を抱えるものも多数あることが懸念されています。

こうした老朽倉庫の再開発や、都心近郊部のマルチテナント型物流施設のタイアップなどにより、今後の物流施設が建設されていくことが予測されます。